小さな女の子が言っている
イタリアの電車内でアジア人を馬鹿にして笑っている女子学生の動画が拡散されている。
こういう差別のニュースを見ると毎回思い出すことがある。
約20年前のこと。
家族で行ったスペイン南部にあるアルハンブラ宮殿の中庭を散歩していた時、幼稚園年少くらいの女の子とその両親の3人がカフェのテラス席にいた。
親は新聞や本を読んでいて、小さな女の子は椅子に座って1人で遊んでいた。
小さな女の子は私たち家族5人を見た途端に、
「Holaオラ、chinoチノ」と言ってきた。(chino中国人=アジア人全体に対する蔑称)
小さな女の子はしつこく「チノ~チノ~」と言っている。
バルセロナ生活も長くなっていたので、それがどういう事かわかる。
特に何もせず、いちいち「日本人だよ」と返事もせず相手にもせずにいた。
我が家の末っ子を見て「オラ チニート(中国人の子)」と何度も言ってくる。
チノ~、チニート~。
その言い方が普段の親の真似をしているのだろう、馬鹿にしたような言い方だ。
中庭を散歩して戻ってきた時にも、しつこく言ってくる小さな女の子。
その言い方にさすがに嫌になった。
夫はその子の両親に「¿qué? 何?」と言った。
母親の方は新聞を読みながら「子供の言う事だから仕方ないじゃない」と言ってくる。
父親は謝って「ちゃんと言い聞かせるから」というような事を言っていた。
夫は「es la cuestión de educación 教育の問題だ」と言って、その場を離れた。
未だに忘れられない。鮮明に覚えている。
教育は大事
一応可愛いらしくみえる小さな女の子が何もわからないまま、親が言っている通りにただ言っているだけなんだと思うけれど、小さな頃からそういう風に育つんだな。
教育って大事だ。
今は大きくなって、20代半ばくらいになっているはず。
もしかしたら、今回のイタリア人女子学生はあの時の女の子かも?
(ciao じゃなく Hola オラって言っていたからやっぱりスペイン人か)
フランスのカルカッソンヌという城壁の街に行った時にも、
小学生くらいの子どもがわざわざ追いかけて来て「チノ~チノ~ 中国人中国人」と言ってくる。
その子の親は知らん顔だ。
旅に出るとそういう事に出くわすことがある。
その頃住んでいた所ではそういう事はあまり無かった。
無かったけれど、一度だけ散歩していた親子とすれ違った時、小さな男の子が「チノ」と言った。
父親はビックリしてすぐに謝ってきた。20年前の事。
末っ子が通っていた幼稚園では一度も言われたことがない。
多分親や先生がきちんと教育していたのだと思う。
教育って大事、世界共通。
フランシスコの冗談
さっき書いた「その頃住んでいた所ではそういう事はあまり無かった」は間違いだ。
いろいろ思い出してきたぞ。
当時住んでいたアパートにアジア人は我が家の他にもう1家族、韓国人一家がいた。
そのアパートは郵便受けがなく郵便が届くと管理人が家々のドアの前に置いて行くのだけれど、管理人フランシスコは間違えて韓国人家族宛の手紙を我が家のドアに置いて行くことがあった。
「これ違うよ、モアンちゃん家の手紙だよ。私にはこれ読めない」と持って行って言うと、
「韓国語と日本語は違うのか?」とビックリしていた管理人フランシスコ。
「目は同じなのにね」と指で目尻を引っ張って、細い目つり目のゼスチャーをする。
管理人フランシスコと私たちは仲良しだから、本人は冗談のつもり。
でも今だったら、大変な事だよ、フランシスコさん。
今度やられたら、親指と人差し指で瞼と目の下を引っ張って大きく開いてみせるかな。
感じる差別
あれから20年。
ドイツに住み、今アメリカにいるけれど、昔みたくあからさまにアジア人と馬鹿にされることは今のところ無い。
ドイツやフランスで「アリガト」と何度か言われたので、ヨーロッパ人は前より頭が良くなったようでアジア人の区別が多少つくみたいだ。
アメリカの人種差別の酷さは前からだし、ナニカあれば銃が出てくるから酷すぎる。
あからさまに言われるようなことが無いけれど、あの頃より感じる差別。
態度に表したり、言わないだけで「アジア人嫌い、大嫌い」と思っているだろうな、、、とこっちが思ってしまう。
年を取って昔より弱ってきた自分が感じやすくなったのか?
世界中でアジアンヘイトがひどくなったからか?
わからない。
20年前は言われても、それほど気にしていなかった。
言われて頭に来ても、相手にしなかった。
多分日本人として誇りを持っていたんだと思う。
今は、、、あの当時より元気がない日本を感じるからかな?
弱っていく日本、弱っていく自分が差別を感じやすくなっているのか?
わからない。